アメリカ永住権(グリーンカード)又はアメリカでの市民権をお持ちの日本滞在者に係る税金

2024.05.29  [Wed]

税務上、日本の居住者に該当する方で、アメリカ永住権(グリーンカード)又はアメリカでの市民権をお持ちの方からのご相談をよく受けます。今回は、そのようなケースにおいて、日本及び米国での税金の取扱いがどのようになるか、紹介いたします。

1. 日本での税金の取扱い

①居住者・非居住者の判定基準

日本の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

②非永住者と永住者の定義と課税

さらに、居住者は非永住者もしくは永住者に区分されます。
非永住者とは、居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である個人をいいます。非永住者は、所得税法に規定する国外で生じた所得(国外源泉所得)以外の所得と、国外源泉所得で日本国内において支払われ、または日本国内に送金されたものに対して課税されます。
永住者は、所得が生じた場所が日本国の内外を問わず、そのすべての所得に対して課税されます。

③非居住者への課税

非居住者は、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)に限って課税されます。

2. 米国での税金の取り扱い

アメリカ永住権(グリーンカード)又はアメリカでの市民権をお持ちの方の場合、世界中どこに住まれていたとしても、米国所得税が課税されることとなり、米国での確定申告が必要となります。
この場合、もし1において日本で課税がなされている場合、両国で二重課税が発生することとなります。二重課税を防ぐため、次に記載しております日米租税条約の確認が不可欠となります。

3. 日米租税条約における取扱い

「合衆国市民である日本の居住者に対する日本の外国税額控除の適用に当たって考慮すべき外国所得税の範囲は、その者に対する市民権課税による所得税額ではなく、その者が市民でないとした場合に合衆国が日本の居住者に対して本条約に基づいて課すことができる所得税額を限度とすれば足りる」とされています(日米租税条約第23条第3項(a))

 また、国内法では、「居住者の所得に対して課される外国所得税の額で、租税条約の規定において外国税額控除の計算にあたって考慮しないとされるものは、控除対象外国所得税に含まれない」ものとされています(所得税施行令222の2④) 

さらに「合衆国における外国税額控除の適用は、合衆国は(a)に規定する控除を行った後の日本の所得税額を合衆国の所得税額から控除することを認める。そのようにして認められた控除は、(a)の規定に従って日本において控除された合衆国の所得税額を減額させない」としています(日米租税条約第23条第3項(b))。 

そして「合衆国市民が日本で所得税を課された合衆国源泉所得については、(b)の規定に従って米国において外国税額控除を認める場合には、(a)に規定する所得を米国の国外所得とみなす」としています(日米租税条約第23条第3項(c))。

 以上のことから、合衆国における市民権課税による所得税は、その者が合衆国市民ではないとした場合に合衆国が日本の居住者に対して本条約に基づいて課税することができる所得税ではないため、米国で外国税額控除を受けることとなり、その結果両国での二重課税が解消されることとなります。

 

アメリカ永住権(グリーンカード)又はアメリカでの市民権をお持ちで日本にお住まいの方の場合、日本のみならず米国での税制を考慮する必要があるため、非常に課税関係が複雑になります。
村田綜合税務会計事務所では、このようなケースでもご相談を承っております。お困りのことがございましたら、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡下さい。

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