役員報酬の損金算入時期、支給日と定期同額給与との関係

2025.05.22  [Thu]

大阪市都島区に事務所を構える、相続・国際税務を専門とする村田綜合税務会計事務所です。

今回は、法人にまつわる役員報酬の税務、特に損金算入時期と支給日、定期同額給与との関係について記載をいたします。

1. 事実関係

当社は3月期を決算月とする普通法人です。これまで毎月の役員報酬を月額1,200,000円として支給をしてきましたが、2025年(令和7年)5月26日付株主総会議事録にて、「令和7年4月分(5月31日支給分)より役員報酬を月額1,300,000円とする旨を承認可決しました。

2024年(令和6年)3月期及び2025年(令和7年)3月期の役員報酬に係る損金算入時期、支給日の関係は以下のとおりとなっています(一部抜粋)。

損金算入時期 金額 支給日
2025年2月28日 1,200,000円 2025年3月31日
2025年3月31日 1,200,000円 2025年4月30日
2025年4月30日 1,300,000円 2025年5月31日
2025年5月31日 1,300,000円 2025年6月30日

したがって、本件の場合、株主総会議事録の記載通りに2025年(令和7年)4月分(2025年5月31日支給分)より役員報酬が増額していることが分かります。

2. 役員報酬の損金計上の根拠

① 法人税法22条3項

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

一 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

二 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

② 法人税法34条第1項一号

役員報酬については①の別段の定めに該当するため、法人税法34条①一を確認する必要があります。
以下の条文により、本件は定期同額給与に該当します。

・支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与であること(法法34①一)
・事業年度開始の日から給与改定後の最初の支給時期の前日まで、給与改定前の最後の支給時期の翌日から事業年度終了の日までの各時給時期における支給額が同額であること(法令69①一)
・事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から三月を経過する日までにされた定期同額給与の額の改定に該当すること(法令69①一イ)

③ 役員給与に関するQ&A(平成24年4月改定)

加えて、本件に類似する事案が、「役員給与に関するQ&A(平成24年4月改定)」Q2(p6~9)において、定期同額給与に該当する例として掲載されています。

本件に当てはめた場合、以下の各支給時期における支給額が同額であるため、定期同額給与に該当することとなります。

・当該事業年度開始の日(4月1日)から給与改定後の最初の支給時期の前日(5月30日)までの各支給時期における支給額が同額である
⇒4月30日は120万円で同額

・給与改定前の最後の支給時期の翌日(5月1日)から事業年度終了の日(3月31日)までの各支給時期における支給額が同額である
⇒5月31日、6月30日、7月31日、8月31日、9月30日、10月31日、11月30日、12月31日、1月31日、2月28日、3月31日は130万円で同額

以上から、この事例からも定期同額給与に該当し、損金の額に算入される。

3. 損金算入時期が株主総会前となっていることをどのように考えるか?

1の事実関係のとおり、役員報酬を130万円に増額した際の役員報酬は、4月30日に損金計上(支給は5月31日)されており、これは5月26日の株主総会前となります。
この場合、株主総会において、以前の月分の役員報酬の損金計上が認められるか?という疑問が生じるかと思います。
こちらについては、役員報酬が規定されている法人税法34条にも、支給日と定期同額給与の関係の記載はあるものの、損金計上時期については特に定めがなく、また国税庁のQ&Aにも触れられていないため、定期同額給与に該当する限りは税法上問題はございません。

 

今回は、会社の税務実務では関わりの深い役員報酬に関する見解を記載させて頂きました。本件のような論点でお困りの方、税務調査で役員報酬について指摘を受けてお困りの方がいらっしゃましたら、是非お問い合わせフォームよりお問い合わせ下さい。

 

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